新しい拡張を前にそれとなく思うこと
新拡張が発表されたね。
英語名で Boomsday ってわざわざ入れてあるぐらいだから、あの懐かしのドクターブームさんが何らかの形でカードになるのだろうか。
詳細はまだあまり明らかになっていないので、あれこれ言う時期ではないんだけど、前回の【妖の森ウィッチウッド】に関して少し思うところがあるので、まずそれを書いてみようと思う。
いきなりだが、ゲームデザインをする上で大切なことは何か(いきなりだなあ)。
俺はそれは「ユーザーを気持ちよく遊ばせること」だと思っている。
いくら対戦バランスが重要なTCGとは言え、バランスだけが保たれていればそれで良いわけではない。どれだけ慎重にカード同士のシナジーを吟味し「健全なメタの構築」に時間をかけても、それ以前に楽しくなければそのゲームは発展しない。
これはまあ、プレイする側からすれば当たり前の感覚である。楽しくないことにをわざわざしようと思わないもんな。しかし、いざゲームを作る側に回ると、残念ながらそうではないことがあるのも事実である。
【ウィッチウッド】で登場したキーワード【急襲】や【木霊】は、それほど成功したとは言えないと思う。
【木霊】は連打を制限させるためか1マナには存在しないし、同マナのカードと比べるといくらか弱くデザインされている。有効に使われている例はクエストウォリアーの【幽霊民兵】ぐらいしか思いつかないような状況である。
【急襲】は「ヒーローを攻撃できない突撃」なので、使うんだったら【突撃】の方がいいに決まってる。ミニオン限定でそのターンに攻撃できたとしても、「危険な場面の回避」にこそなれ、「勝負を決定付けるカード」にはなり得ない。どこまで行っても、相手ミニオンありきの受け身な能力だからだ。
実際に、以前からある【電撃デビルサウルス】や【ウルフライダー】の方が見かけることが多いのは、単純にカードパワーが弱いからだろう。
これらのキーワード能力が「あまり有用ではなさそうだぞ」ということは、リリース前にテストをしている開発側も予想できていたと思う。しかし結果としてリリースしたのはなぜだろうか。
それはきっと「環境をコントロールしたかった」からなのだと思う。
開発側の予想を超えて、あるカードが猛威を振るうことは、これまでに何度もあった。その度にナーフを行ってきたわけだが、ちょいちょい問題になったのは【突撃】持ちのカードたちだ。相手からしてみれば、出たターンにフェイスを殴られるというのは、対策できずに負けることにほぼ等しい。ある種の理不尽さを感じる要因になっていたのも事実である。
以前ベン・ブロードが「突撃についてはもっと慎重になるべきだった」という主旨の発言をしていた。直接的には【ウォーソングの武将】がナーフに至るまでのことを言っているのだろうが、それ以降も突撃ミニオンのリリースに対して慎重になっていたのは、制限付き突撃の【アイスハウル】や【電撃デビルサウルス】からも読み取ることができる。1/1のスタッツで大丈夫だろうと思われた【海賊パッチーズ】も、結果的にナーフされ【突撃】が消えることになってしまった。
結果、基本カードとクラシックを除いて【突撃】カードは無くなった。
代わりに【急襲】を入れることで「環境をマイルドに」し、開発者の意図できない「暴力的な動作」を少しでも減らそうという気持ちの現れだと思う。
また、ベンが退職した現在、残った開発者は先に書いたようなベンの発言を、ある程度意識しているはずだ。なぜならベンはこれまでのハースストーンにおける偉大なアイコンであり、彼がいなくなってすぐにそこから逸脱することは、ユーザーが不信感を抱くきっかけになりかねないからだ。
というわけで、あからさまな逸脱を避け、無難に新しいスタンダード年を開始したかったのではないか。そしてそれが、あまり面白くないと言わざるを得ないキーワード能力に繋がったのではないかな。
おっと。
珍しくいろいろと書きすぎてしまった。
ただ、俺は決してネガティブな気持ちでだけ書いたわけではない。常に新しい環境を提供し続けるには、時にマイナスに思えるような判断も必要だし、試行錯誤しなければ発展はない。新しい拡張と、それがもたらす環境がもっと楽しくなることを願って、ひとまずこの稿を終わらせようと思う。
っていうか、まんまとメガバンドル買っちゃったしね。メカジャラクサス、バカっぽいデザインでいい!
それじゃあ、またー。
追記)
そう言えばこないだ相手がローグで【コボルトの幻術師】を場に出していて、こちらがウォーロックで【冒涜】を使ったんですよ。
そしたら相手の手札にはミニオンがもう一枚の【コボルトの幻術師】しかいなかったらしく、延々と1/1の【幻術師】が召喚され続けてしまったのね。
あー、これ無限ループじゃん。と思ってしばらく見てたら、何回か繰り返したところでループが終わって、次のターンに進んだわけさ。
それはまずい!
と、思わず叫んだね。
なんでか。
この現象はアナログのTCGでは決して起こらないからだ。
上記の無限ループが発生した時点で、アナログなら「ルールブックを参照する」「ジャッジに聞く」「どこにも記述がなければ公式に問い合わせる」などの「プレイを中断して、正しい判断がなされたうえで再開する」という手続きを踏むことができるからだ。
この例なら、カードテキストに書かれていることを実行すると、無限ループに陥ることが分かった時点でどうすれば良いかを問い、それまで中断することができる。なんならその試合はノーコンテストとすることもできる。
しかし、ハースストーンはデジタルでこれらのことを行ってしまった。しかも何の断りもなしでだ。
それはまずいだろう!
……。
………。
失礼、興奮しすぎました。
冷静になって考えてみると、この例だけなら大きな問題にはならないと判断されたんだろうな。いちいち全部書いてたら大変だもんな。
と、思い直した。
以上である。